Skip to main content

EKSの請求書は月末にならないと読めない。Kubernetesのコストが『後から分かる』構造的な理由

なぜKubernetesのコストは「請求書が来てから」わかるのか

section01

毎月のクラウド請求書を開いて、想定より高い金額に驚いた経験はないでしょうか。EKSやAKSのようなマネージドKubernetesは、使った分だけ課金される従量課金モデルが基本です。この仕組みは無駄なリソースを持たずに済む柔軟性をもたらす一方、裏を返せば「使い終わるまで総額が確定しない」という構造的な不透明性を抱えています。

Kubernetesのコスト管理が難しい最大の理由は、技術者の怠慢ではなく、オートスケールやマルチAZ構成そのものが持つ設計上の性質にあります。実際、CNCFが実施したFinOpsに関するマイクロサーベイでは、Kubernetes導入後にクラウド費用が増加したと回答した組織が49%にのぼり、正確なコスト情報を把握できていた組織はわずか19%にとどまりました。約4割は推定値に頼り、4割近くはコスト監視の仕組みそのものを持っていなかったのです。

この記事では、EKS/AKSのコストが「後から分かる」構造になっている技術的な理由を分解し、K3sベースのマネージドインフラでコストを事前に固定するという選択肢について解説します。

コストが膨らむ3つの構造的な穴

section02

Kubernetesの運用コストが想定外に膨らむ背景には、少なくとも3つの構造的な要因があります。

穴1: オートスケールが生むアイドルリソース

Horizontal Pod AutoscalerやCluster Autoscalerはトラフィックの急増に対応するための仕組みですが、スケールダウンの判断は保守的に設計されています。トラフィックが落ち着いた後もノードやポッドがしばらく稼働し続け、使われないリソースに対して料金が発生し続けるケースは珍しくありません。Sysdigの調査を基にしたScaleOpsの分析によれば、Kubernetesクラスタでは平均して69%ものCPUコアが未使用のまま確保されており、150ノード規模の組織では年間で約100万ドル相当を過剰に支払っている可能性があるといいます。

穴2: クロスAZ通信費という見えないコスト

高可用性を確保するために複数のAZ(アベイラビリティゾーン)にワークロードを分散するのはベストプラクティスですが、これがコストの見えにくさを助長します。AWSの公式ベストプラクティスドキュメントでは、kube-proxyがデフォルトで採用するiptablesベースのトラフィック分散が、ノードやAZの配置を考慮せずポッド間通信を振り分けるため、意図せずAZをまたいだデータ転送料金が発生しやすいと説明されています。この課題に対しては、Kubernetes公式ドキュメントが定義するTopology Aware Routingのように、同一ゾーン内のエンドポイントを優先してトラフィックを振り分ける仕組みを導入することで、クロスAZ通信を抑制できます。ただし、これは「デフォルトでは対策されていない」ことの裏返しでもあります。

穴3: 断片化した請求ダッシュボード

AWS Cost Explorer、Azure Cost Management、GCP Billingはそれぞれ異なる粒度でコストを報告するため、「今月のKubernetes関連支出はいくらか」という単純な質問に即答できない組織が少なくありません。Spectro Cloudの2025年レポートを引用したScaleOpsの記事では、88%の組織がKubernetesの総保有コスト(TCO)の前年比上昇を報告し、42%がコストを最大の課題として挙げています。

「コードは簡単、問題は手続き」— コスト超過は技術ではなく設計の問題

section03

興味深いのは、コスト超過の主因が「技術的に不可能だから」ではなく、「可視化と自動化の仕組みが後回しにされているから」であるケースが多いという点です。CNCFのFinOpsマイクロサーベイでも、過剰プロビジョニングが原因の70%を占め、続いて「使われなくなったリソースの放置」や「チーム内でのコスト責任の所在が曖昧」といった、技術以前の運用プロセスの問題が上位に並びます。

コード自体を書くことは決して難しくありません。難しいのは、誰がどのリソースにいくら使っているかを継続的に可視化し、不要になった瞬間にリソースを解放する仕組みを組織として維持することです。EKSやAKSでこれを実現するには、Karpenter、Vertical Pod Autoscaler、コストダッシュボードといった複数のツールを個別に導入・運用する必要があり、それ自体が追加の運用負荷になります。実際、Cast.aiのAKSコスト最適化ガイドでも、手動でのクラウドコスト管理から自動化された最適化基盤への移行が、最も効果の大きい施策として位置づけられています。

こうした「後付けの最適化」を積み重ねるのではなく、そもそもコスト構造をシンプルに保つ設計を最初から選ぶという発想もあります。その一つが、軽量なKubernetesディストリビューションをベースにしたマネージドインフラです。KuboのようなK3sベースのサービスであれば、複雑なオートスケール調整やマルチツール運用に頼らずとも、予測可能なコスト構造を最初から手に入れられます。

K3sベースのマネージドインフラでコストを「先に固定する」という選択

section04

EKS・AKSのコスト構造をさらに複雑にしている要素の一つが、コントロールプレーンの課金体系です。AWS公式の料金ページによれば、EKSの標準クラスタにはクラスタあたり1時間0.10ドルのコントロールプレーン料金が発生します。マルチクラスタ運用ではこれが積み重なり、無視できないコストになります。一方でSedaiが解説するAKSの料金モデルでは、Azureのマネージドコントロールプレーンは全リージョンで無料と説明されており、同じ「マネージドKubernetes」でもプロバイダーによってコスト構造の前提が異なることが分かります。この違いを正確に把握しないままマルチクラウド戦略を組むと、想定していたコスト計算が崩れるリスクがあります。

K3sベースのマネージドインフラであるKuboは、こうした複雑な課金体系そのものを単純化するアプローチを取っています。4vCPU/8GB/40GB構成のノードを3台用いた場合の月額費用を比較すると、Kuboが48,000円であるのに対し、AWS EKSは82,700円、Azure AKSは85,710円、GCP GKEは60,100円という結果になります。K3sは軽量なKubernetesディストリビューションでありながら標準Kubernetes API互換であるため、ベンダーロックインを避けつつ、AI-Driven DeploymentやCaptain UIといった運用支援機能によってオートスケールやリソース調整の手間そのものを減らせる設計です。詳しい料金体系はKubo・料金プランで確認できます。

Reserved InstancesやSpot VMを組み合わせれば、Cast.aiの分析が示すように1年契約で最大48%、3年契約で最大65%のコスト削減も可能です。ただし、これらは「複雑な料金体系を正しく使いこなせば」という前提付きの最適化であり、最初から固定費で設計されたインフラとは根本的にアプローチが異なります。どちらが自社に合うかは、運用チームの規模やコスト管理にかけられるリソース次第です。

まとめ

EKS/AKSのコストが「請求書が来てから分かる」のは、決して珍しい失敗ではなく、オートスケール・クロスAZ通信・断片化した請求ダッシュボードという3つの構造的な穴に起因する、ある意味で必然的な現象です。そしてその根本原因は、多くの場合「技術的に不可能」だからではなく、可視化と自動化の仕組みが後回しにされていることにあります。

コスト超過を後から最適化ツールで抑え込むアプローチもあれば、K3sベースのKuboのように、最初から予測可能な固定費でKubernetesを運用するという選択肢もあります。自社のコスト管理体制がどちらに近いのかを見極めることが、Kubernetesのコストを「後から驚く」ものから「先に計画できる」ものへと変える第一歩になるはずです。マルチクラウド戦略やコスト構造の見直しを検討している場合は、お問い合わせから相談することもできます。

Related articles

← Back to all posts